カテゴリ別の音源トレンド調査ーゲーム業界編ー

世界中に何千種類とある音源プラグイン。
いわゆる定番商品はあれど、どれを選べば良いのか指標が少ないのが現状かと思います。

既に様々なコンテンツが世の中に存在する中で、我々もどういった形でお伝えするのが分かりやすいのか日頃から模索をしています。宮地楽器のレビューブログ、通称「試してみたシリーズ」などは音源を上げたり、実際の使用感をお伝えしたりしていますが、今回は少し趣向を変えまして、アンケート形式で人気プラグインを探ってみようと思います。

ご回答頂いた皆様

『商業ゲームでコンポーザーの仕事をしていること』を条件とさせて頂きました。
お名前と会社名を伏せることを条件に、28名もの職業クリエイターの方にご回答を頂いています。大手ゲーム会社の方が6割程度、残り4割は制作会社という比率で、ゲーム会社にお勤めの方が多い印象でした。
改めまして、ご回答頂いた方には御礼申し上げます。

お名前の掲載許可を頂いた方

Masahiro “Godspeed” Aoki
プロデューサー・コンポーザー・ギタリスト・ViViX統括。

2008年にカプコンに入社し、戦国BASARAシリーズやロックマンXoverの音楽制作を担当。​ 2014年に同社を退社後自身の音楽レーベルViViXとしての活動を本格化させる一方でストリートファイターVの作曲を担当する等ゲームコンポーザーとしても活動している。2016年4月に新世代のギタリストプロジェクト「G.O.D.」としてリリースしたアルバム「G.O.D.111」の収録曲がKONAMIの音楽ゲームGITADORA Tri-Boostに収録されるなど、音楽ゲームにも活動の場を広げている

来兎(らいと)
ゲーム音楽家

メルティブラッドシリーズ、アンダーナイトインヴァースシリーズのサウンドプロデュースや魔神少女、おそ松さんのへそくりウォーズ等のゲームサウンドを担当。
ゲーム以外にもでんぱ組.inc等アイドルへの楽曲提供や、CM音楽も多数制作。

※他のご回答者様も随時追加可能ですので、宜しければご連絡下さいませ。

設問について

設問は以下のような形で設定させて頂きました。

この様に楽器をカテゴリ毎に分け、定番商品などをアンケート形式にしています。
また、音源プラグインは楽曲によって使い分けるのが基本かと思いますので、複数回答可となっています。

カテゴリは「ドラム音源」「ベース音源」「ピアノ音源」「シンセサイザー音源」「アコースティックギター音源」「エレキギター音源」「オーケストラ音源」「ソロヴァイオリン音源」「エスニック音源」の9種類。
大方の予想通り「Other」項目が賑わっておりますので、こちらも後半で全て拾わせて頂きます。

という訳で、結果発表の方に参ります!

設問1:作曲時に使用しているDAWは?

使用DAWはSteinberg/CUBASEが堂々のトップ、次点がApple/Logicでした。CUBASEとPro Tools、CUBASEとLiveなど、組み合わせて使っている方も数多くいた印象です。

その他項目:SONAR

設問2:お使いのOS環境は?

大きな有意差は見受けられませんが、今回お答え頂いた方はMac環境の方が多いようです。

設問3:最も良く使う「生ドラム音源」は?

BFD3、Addictive Drums、Superior Drummerの順にランクイン。BFD3はエフェクトをバイパスした時のサウンドが生に近く、生ドラムを再現するなら相変わらず高い人気のようです。一方、Addictive DrumsやSuperior Drummerは豊富な拡張音源と即戦力なところが魅力。BFDとSuperiorなど、複数併用の方が多いようでした。

その他項目:NI Studio Drummer x 2、DrumTree x 2、Steinberg Groove Agent SE、Logic Drummer、Quantum Leap Ministry Of Rock

NI Studio DrummerやGroove Agentなど人口が多い音源に混じって、最新のドラム音源DrumTreeが奮闘しているのが印象的です。

設問4:最も良く使う「ベース音源」は?

ベース音源は圧倒的にTrilianが使われているようです。定番たる由縁は音質は勿論、多弦ギターを用いるような曲にも余裕で対応するLow E以降まで再生出来るところでしょうか。また、発売したばかりのMODO BASSも3位にランクインしています。2位のScarbeeシリーズも熱心なユーザーが多いようです。

その他項目:Modern Bass(Ilya Efimov)、GIGA BASSライブラリー、MM Bass、自分で演奏する

MM BassはScarbee一派なので、そちらに一票追加させて頂きました。これで十分!という場合も多いです。

後ほど差し替えを行う際の仮音源としても、動作軽量で都合が良いようです。

設問5:最も良く使う「ピアノ音源」は?

ピアノ音源もやはり定番が強く、業界水準とも言えるIvory IIが圧倒的多数でした。次点のPianoteqは軽量&オケに混ぜると良い感じのヌケ感がある優秀な音源。その後はクリアな質感を持つAddictive Keysや、KOMPLETEに付属することでユーザー数の多いGRANDUER、MERVERICKなどが続きます。

その他項目:Alicia Keys x 2、New York Concert Grand、NI Factory Presets、Omnisphere 1.5、STEINWAY VIRTUAL CONCERT GRAND PROFESSIONAL、Keyscape、GIGA PIANO、Fantom X、Piano Premire

ここもNI系の音源が強いです。「Keyscape」を選択肢に入れ忘れた!と焦りましたが、こちらは1名のみでした。総合鍵盤音源として見ると面白いですが、ピアノ音源として見るとまだまだ専用音源の方がメジャーのようです。他にもFantom Xが登場。ハードシンセのピアノも良い味出します。

設問6:最も良く使う「シンセサイザー音源」は?

圧倒的にOmnisphereが1位でした!次点でMassive、その後はNEXUS 2やSylenth 1が続きます。今回はV Collectionなどビンテージシンセ系の音源を選ぶ方はそれほど多くなく、モダンなサウンドが人気を博す結果となりました。また、その他項目が最も盛り上がったのもこのシンセサイザー音源の項目でした。

その他項目:FM8 x 2、Synth1 x 2、SERUM x 2、Reaktor 5、Absynth 5、SYNTHMASTER、A|A|S Ultra Analog VA-2、Steinberg Hypersonic2、Spire、DUNE2、Heavyocity AEON、Archemy(Logic)、ES2(Logic)

シンセ音源はやはり多様です。SpireやSERUM、SYNTHMASTER辺りは複数いらっしゃるだろうと想定はしていましたが、実際のところは見事にバラバラでした。今もってSynth 1の人気が高いのは少し意外でしたが、これも基本にして奥義、みたいな感じがします。

設問7:最も良く使う「アコースティックギター音源」は?

かなり意見の分かれる内容になりました。REAL GUITARシリーズの流行から数年、今はAMPLE SOUNDが追いつくまでに至っています。エレキ音源で有名なProminyですが、Humming birdユーザーも複数いるようです。

その他項目:自分で演奏 x 3、QLMinistryOfRock内蔵ストラムサンプル

※アンケートに不備があり、回答受付からしばらく後に「Other項目」を作成したため、正確性は他と比べて低いものと思います。申し訳ありません…

設問8:最も良く使う「エレキギター音源」は?

エレキギター音源に至っては、ほとんどの方が「その他」でした。最も多いのが「自分で演奏」というもので、やはりギターだけは録音される方が多いようです。ギターは打ち込みが難しい部類ですし、楽器人口としても多いので、これは妥当な結果と言えそうです。

その他項目:自分で演奏 x 6、Virtual Guitarist x 4、EASTWEST/Ministry of Rock 2 x 2、Real LPC x 2、EEG Strawberry、SHREDDAGE 2、Junk Guitar、Raging Guitar

自分で弾く以外だと、「ギタリストに指示を出すもの」として、打ち込み易いソフトウェアを選択される方が多いような印象でした(なんとなくメタラーが多い気がします)。Junk Guitarは現在は有償版のみですが、少し前にフリー音源として話題になりましたね。

設問9:最もよく使う「オーケストラ音源」は?

その他項目を含めると「EASTWESTシリーズ」が最も良く使われているという結果となりました。

Viennaはやはり定番というだけあってユーザー数も多いようですが、思ったよりも数字が伸びなかった印象です。

その他項目:spitfire ALBION x 6、8dio系(Anthology、Adagio、Agitato etc) x 5、NI Action Strings、soundiron、audiobro LASS、SYMPHONIC BRASS、Eastwest Symphonic Orchestra、EASTWEST Quantum Leap、QLSO x 2、Cinesamples

その他項目ではSpitfire ALBIONがトップ。8dio系も高い人気です。これまでの傾向からKOMPLETEユーザーが多いような印象がありましたが、NI Symphony Seriesはランク外。意外とKOMPLETE ULTIMATE 11に上げずに使っている人が多いのかも知れません。

設問10:最も良く使う「ソロヴァイオリン音源」は?

これも意見が分かれましたが、今回は王者ViennaがLASSに破れる形となりました。Violinは生録の場合も多いですが、打ち込みで再現する場合はLASSやVienna、Hollywood Solo Violinなどを用いる形になりそうです。オーケストラ音源と合わせて、spitfire辺りも定番化している印象です。

その他項目:使用しない x 4、Embertone Friedlander Violin x 2、8dio、spitfire、soundiron、sample modeling、GARRITAN STRADIVARI SOLO VIOLIN、Miroslav Vitous – Symphonic Orchestra Samples、QLSO、QLGypsy

その他項目は見事にばらばらになってしまいました。僅差でEmbertoneがランクインしています。
やはり生録+打ち込みのコンビネーションによる再現が多いような印象を受けます。

設問11:最も良く使う「エスニック音源」は?

取りあえずの民族系はKOMPLETE U11で対応する方が多いようです。逆に、こだわる方は自分で様々サンプルを探されているようです。ETHNOよりEASTWESTの方が使用率が高いのは、シンフォニック系のサウンドを作ることが多いゲームの現場ならではかも知れません。

その他項目:

EASTEWST Quantum Leap RA x 3、各種Kontaktライブラリ多数、総合音源ではなく楽器/地方ごとに細かくライブラリを集める、MOTU ETHNO2、Evolution Series World Percussion 2.0、GarageBand、使用しない
こちらはこだわる方と全く使わない方とが分かれてしまいましたが、総合音源として人気が高いのはRA。もともとEASTWESTユーザーが多いので、ある程度見えていた結果かと思います。

アンケート結果まとめ

いかがでしたでしょうか。俯瞰して見ると、やはり定番は定番たる由縁があるような感覚です。
一方において、現時点では国内代理店のない8dioや取り扱いの少ないspitfire ALBIONが数多くランクインしたりと、「やっぱり皆、これ使っているのか!」という気付きも得られたと思います。

これを参考にプラグインをご選択頂いても良いと思いますし、逆にみんなが使っていないユニークなプラグインを探すというのも楽しいと思います。今は本当にいい時代で、ここで名前が上がったプラグインは公式サイトやYoutubeで音を聴くことも可能ですし、デモ版も一部用意があります。

また、宮地楽器神田店でも国内代理店のある音源プラグインであればご試奏が可能です。
「何を買ったら良いか分からない」「○○系でオススメの音源ある?」など、お問い合わせ頂ければ専任スタッフがご案内をさせて頂きます。

ちなみに…。

という質問項目も最後に用意してありまして、合計3,000文字以上任意コメントを頂きました。
次回続編、「これだけは外せないプラグイン、コメント全公開!」をやってみようと思います。
乞うご期待下さいませ!

 

2017年6月9日追記:公開いたしました
【現役ゲームサウンドクリエイターに訊く!】「これだけは絶対に外せない音源!」を語って頂きました

 

share

CONTACT

お問合せ/ご来店予約/
買取申込/みくスタ予約