電源問題のプロフェショナルが送る電源物語

Voltampereって名前に直ぐにピンと来ない人でも、プロご用達の電源モジュール「GPC-TQ」をご存知の方は多いんじゃないですか?

そうです、クリエイター憧れの機材のひとつとして有名ですよね!この電源をシステムに導入するだけで音の解像度が高まり、制作のクオリティーがワンランクアップする素敵アイテムとして、様々な雑誌やWEBで取り上げられております。

今回からは、そんな「GPC-TQ」の設計者であるVoltampereの宮寺さんに、電気(電源)にまつわるお話を伺うシリーズがスタートします。電気のプロフェショナルとお送りする電源物語の記念すべき第1弾は「電源の極性について」です。

では早速参りましょう!

Vol.1:電源極性物語

初めまして、プロオーディオやホームオーディオ等で電源の仕事をしている㈲ボルトアンペアの宮寺と申します。これまで経験してきた電源にまつわることを書いていこうと思いますので、よろしくお願いいたします。

まずは簡単に自己紹介から、普通高校から拓殖大学政経学部からオンキョーと言うオーディオメーカーに営業職として就職しました。10年後、某マーケティング会社で市場データの営業を経て、今は民事再生手続きで無くなってしまいました信濃電気に入社して、電源の仕事に関わるようになりました。これまで電気のことは中学校でオームの法則を習った程度の文系の人間ですが、どうにか第二種電気工事士の資格を取得するまでの知識と技術?を身につけることができ、㈲ボルトアンペアを立ち上げ今に至っています。

このように学問的に電気を学んできたわけではありません、信濃電気在籍時に周りの方々に教わりながら経験しながら蓄積してきたので「おいおい、ちょっと違うぞ」ということもあるかと思いますが、いわば現場での電気の話と言うことでご容赦いただきましてお付き合い願います。

さて日頃、色々なイベントに出展したり見学したりしていましたが、その際に電源極性のご質問をされる方が多かったので、良い機会なのに自分の忘備録を兼ねて取り上げてみたいと思います。

極性を調べる際に、まず用意するものとしては「テスター」が必要です。ネオン管の点灯で極性を知らせるタイプの検電ドライバーもあります。しかしながら、検電ドライバーは壁コンセントや電源タップなどは調べられますが、機器の極性を調べることは出来ないので、やはりテスターを使いましょう。出来れば、デジタル式のテスターが数値を読み取りやすいのでお勧めです。

今回はデジタル式のテスターを使ってお話していきます。ポジションは、交流の電圧です。フリーの状態では「16.4mV(ミリボルト)」です。

本来なら壁コンセントに赤と黒のテスター棒を差し込んで測定するのですが、今回は機器の極性も調べるので電源タップで代用します。このタップは自作のデモ用なのでコンセントカバーをつけていませんが、あしからず。

実際の一般的な壁コンセントは平行の2つのスリットの仕様ですが、3ピンタイプと同様に短いスリットと長いスリットになっています。交流の電圧を測定するので、テスター棒を両方のスリットに差し込んでいます。
テスターの数値は、「102.9V」です。
次に極性を調べます。屋内配線がキチンと配線されていれば、短いスリットが「ホット(ライブ、プラス)」長いスリットが「コールド(アース、マイナス)」です。

長いスリットは、そのまま、電信柱の柱上トランスから地面に落ちて文字通りアースとなっています。(設置抵抗10以下のA種アース)

測定方法は、テスター棒の片方を壁コンセントの一方に差し込んでもう片方を自分の手で握ります。(※ボディアースと言いますが、テスター棒を握っても感電しませんのでご安心下さい。)

さて、その数値を読み取ります。最初は、短い方のスリット(ホット側)で、テスターの数値は「34.0V」でした。覚えておくかメモしておきましょう!

次は、長い方のスリットにテスター棒を差し込み数値を読み取ります。
長い方のスリットは「3.95V」です。

この場合の数値自体は、テスターや電源環境によって異なりますので、電圧の数値がどちらのスリットが「高いか?低いか?」で判断します。

今回は、短い方が明らかに高い電圧でしたので極性は「正しい」ことになります。

壁コンセントの屋内配線は、内線規程と言う電気工事の規範で、マイナスは、白線と定められていますので間違いはありませんが、電気の配線工事も人間が行うものですから、ごく稀に極性が反対になっていることがありますので、一度、確かめてみることをお勧めします。

さて続きまして、機器側の極性を測定する方法です。最近の付属電源ケーブルは、アース端子付き3Pプラグがほとんどですが、ビンテージ機材では、機器本体からの直出し電源コードやACアダプターなどは平行タイプ(2P)が一般的です。

それでは実際ににその場合の調べ方に進みます。今回は、デモ用に購入したインレットタイプ(右の画像)を使用しています。

まず測定する機器は接続されているケーブル類は全て外して下さい。またラッキングされている場合は、取り外して単体の状態にして下さい。

 

測定する機器のネジやアース端子にテスター棒の片側を固定します。ネジに固定する場合は手で押し当てて下さい。そして、もう片方のテスター棒は、自分の手で握ります。(お馴染みのボディアースです。)

そして、機器の電源ケーブルを用意した電源タップに差し込んで下さい。この際の電源タップは、「GPC-TQ」やPC用電源タップのようなフィルタータイプではなく、シンプルな仕様の製品を使ってください。フィルターに使われているコイルや抵抗によって、数値が正確に測定できない可能性がありますので、ホームセンターや家電店で販売されている一番シンプルな物でも充分です。平行タイプは目印がありませんので、ホワイト等でマーキングすると測定しやすくなります。

最初は電源がオフの状態で測定します。

電源SW OFF「3.495V」、電源SW ON「10.98V」回路に通電されるとシャーシに流れる電圧が上がりました。

次に差し込んだプラグを逆に差し替えます。目印のマーキングが裏側になります。

電源SW OFF「3.91V」、電源SW ON「3.89V

今度は、微妙な数値ですが回路に通電されるとシャーシに流れる電圧が下がりました。シャーシ電圧が下がる方が正極性ですから今回は後者の方が正極性となります。

数値は条件によって異なりますので、出来れば複数回行い確度を高めた方が確実です。(数値が両方とも上がったり下がったりすることもあり得ます。その場合は数値の小さい方が正極性の場合が多いです。)

最終的には「聴感での判断」も重要です。極性があってない場合、音場や定位がぼやけたり、ボーカルの口が広がったりと違和感があると思います。慣れれば自分でも判断できると思いますので、一度テスターと電源タップを使って測定してみて下さい。

 

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