定番シンセとして君臨し続ける『Omnisphere 2』をしっかりレビュー

既に大定番シンセとなって久しい「Spectrasonics/Omnisphere 2」。サンプルの良さとパターンの豊富さ、高い利便性など全てが高水準にまとまった正真正銘のモンスターシンセとして、今や多くのクリエイターのフェイバリットシンセとして大活躍の製品です。

Atmosphereから同シリーズを知る者としては、全く予告なしのNAMM 2015での衝撃的発表も昨日のことのように思い出せます。私自身もほぼ毎日立ち上げているプラグインになりますので、今回は「このシンセで何が出来るのか?」の諸情報を整理しつつ、個人的な使用感を踏まえながらレビューをしてみようと思います。

目次

  1. 「音が良い」ー合計40GBのライブラリと10,000種類以上のプリセットサウンド
  2. 「探し易い」ーキーワード検索・サウンド属性・イメージで絞り込み可能な音色ブラウザー
  3. 「音作りが無限」ー自分で用意したサンプルも読み込める!+グラニュラーシンセシス
  4. 「エフェクト類が豊富」ーフィルタータイプが追加、エフェクトが追加

1.「音が良い」ー 40GBのライブラリと10,000種類以上のプリセットサウンド

Omnisphere 2がこれだけの人気を博し、数々のプロダクションや大作映画でも使われている理由。
それはひとえに「元から良い音がたくさん入っているから」だと思います。

Spectrasonicsのシンセ音源と言えば古くはAtmosphere、一世を風靡した無印Omnisphereがありますが、Omnisphere 2にはその両者の音源が全て収録されています。2からの追加音源を加えると、ついに12000種類以上のプリセットを有するに至りました。

もちろん、一個一個の音も大変良く出来ています。

5:34~辺りからが面白いのですが、様々なアイディアのもと独特なサウンドが収録されています。
新規追加されたEDMライブラリばかりに目が行きますが、実はエレピやアコースティックギター、エスニック系の音源なども丁寧に収録されており、シンセ音源というよりは総合音源に近い印象を受けます。意外と注目されていないこの辺りの音源も、実は実制作での出番が多いです。
Spectrasonicsの音源は全般的に質感が独特で、のっぺりせず立体的なサウンドに聴こえます。録りが良いのかも知れません。

2.「探し易い」ーキーワード検索・属性・イメージで絞り込み可能なブラウザー

単体でもこの通りの音色数ですが、TrilianやKeyscapeなどを所有しているとSTEAMに統合され音色数が更に増えて行きます。これだけのプリセットが用意されていると、目的の音に辿り着くのも一苦労。「Omnisphere 2」というワードを調べてこの記事を読まれている方は「Sound Match機能」「LOCK機能」に関してはご存知かも知れませんが、実際に使用感はどうなのか?という所を書いてみます。

似ている音を自動的に探してくれる『Sound Match機能』

Sound Match機能は例えば、何か適当なプリセットをひとつ選んでみて、
「これに近い感じの別音が欲しいなー」と思った時にSound Matchを押すと…

このように、近い順にリストアップされて行く機能のことです。
横のバーが適合度で、内部的にはプリセットごとにアノテーションされた複数のタグ情報の共通性を検索し、同じタグが多いほど似ていると判断される仕組みです。
「Piano」や「Guitar」などの楽器名称のタグの他にも、「Hard」、「Soft」など様々な感性語が付与されています。

試しにPopple PluckersというプリセットからSound Matchして、上から4つを鳴らしてみました。
とても似ている!…のと、4つ目の「合ってる度」がちょっと低いところがリアルですね。

このタグ情報は検索にも引っ掛かるので、例えば「Guitar Hard」や「Piano Broken」のようなワードで検索を掛けても大丈夫。
カテゴリ指定→検索をすれば、当然そのカテゴリ内だけでの検索も可能です。つまり、SFXカテゴリの中の「ハードなギターっぽい音」を検索でサクッとヒットさせる事が可能です。
快適なブラウジングとこのSound Match機能によって、沢山の音色の中から自分が欲しいモノをすぐに探し出す事が出来る、ということですね。

なお、私自身は日頃、こんな感じで音を探しています。

  1. 欲しい音がありそうなカテゴリに入る
  2. 上から下までプレビューしていく(PCの矢印キーの上下でプリセットを切り替えて試し弾き)
  3. イメージに近い音が見付かったら「Sound Match」を押す
  4. 出てきたプリセットを上から下までプレビューしていく

大体の場合、これでOKです。個人的には「自分で色々作ろう!」というよりは、プリセットから編集するスタイルが多いです。

パラメータを保持したままプリセット切り替えが可能な『Sound Lock機能』

もうひとつ、特筆すべきはアルペジエイターで作ったフレーズなどを保持出来るSound Lock機能。欲しい音が見付かったけど、今選んでいるプリセットのアルペジオフレーズは生かしたままにしたい…なんて場合は、LOCKしてしまえば別プリセットに持ち込めます。

LOCK出来るのはアルペジオだけでなく、上図のように様々なパラメータが保持できます。他に良く使うのは”Filters”。シンセ系の音色を動的に制御する場合Filterの掛かり方がサウンドの方向性を決定付けますが、Omnisphereにはかなりの数のFilter Typeが用意されているため「あのギュワってした掛かり方、どれだっけ…?」と悩むこともしばしば。

大事なパラメータは大事に取っておいて、Sound Matchと合わせて最適な音色を見付けていきましょう。

3.自分で用意したサンプルも読み込める!+グラニュラーシンセシス

自分の音素材を取り込んでライブラリとして使えるオーディオインポート機能。単純に取り込んで鳴らすという事も出来ますが、Omnisphereではグラニュラーシンセシスを用いて破壊的な音作りをする事が可能です。

 

グラニュラーとは?元素材を細かく分断し、再構成する音作りの方法です。パッド系の音色を作ったり、あるいはグリッチノイズのようなサウンドを作ったりするのが得意です。元音が分からないレベルで分断→再構築(並べ直す)ことで、全く予測不能のサウンドが生まれます。グラニュラーだけでなく、音をユニゾンして重ねて行くUNISONやハーモニーを足して行くHARMなど、とにかくいじればいじるほど音が変化していきます。

好きな音を取り込んで、こうした複雑なサウンドを作り込める。
もちろん一般的なサンプラーにあるようなエディットも可能なので、もはや音作りも無限と言っても良いかも知れません。

4.DSP Waveforms、フィルタータイプ、エフェクトも盛りだくさん!博物館のようなボリューム感

プリセット数が1万を超えたという事で盛り上がっていますが、それ以外にも色々増えています。

DSP Waveforms

 

DSP Waveformsはつまり、音作りの基本波形のことです。実際にオシロスコープで見てみると良く分かるのですが、「矩形波」「三角波」と一言で言ってみても、各メーカーのシンセごとにバラつきがあります。原理的な話は今はさておき、電気信号は往々にしてブレるもの。ARPっぽい音、MOOGっぽい音、JUNOっぽい音、それぞれ違う理由はこの辺りにあるんですね。

という訳で、改めてOmnisphereに搭載された400もの膨大なWaveformsを見てみると、もはや博物館クラス。シンセ好きとしては、これだけでも価値があるなぁと思います。

エフェクト

エフェクトに関しては、実はNomad Factoryの技術を使っています。Blue Tubeなどでお馴染みの同メーカー、真空管のエミュレートやビンテージサウンドはお手の物です。特にリバーブやディレイの空間系の独特の色付け感は、個人的にはかなりツボな感じです。

フィルタータイプ

シンセと言えばFilter。かなり数が増えています。中には非常に個性的なフィルターも多く、「もう少し音を変えたい…!」なんて場合、案外このフィルタータイプを弄るのも効果的だったりします。前述の通りこの辺りもSound Lock可能です。

まとめ-良い音がたくさん、探し易さも最高のシンセサイザー

簡単に説明しようと思ったものの、結局かなりの分量になってしまいました。今回は「音色/エフェクト/フィルターの種類の豊富さ」と「音の探しやすさ」にフォーカスを当ててみましたが、この他にも進化したアルペジエイター機能やiPadから制御可能なOrbなど、まだまだ機能が数多く存在します。

ただ、全ての機能を最初から理解していなくても、スゴい音が出せるのがこのシンセの良いところ。最初は「プリセットを少し加工して使ってみる」程度であっても、必ず戦力になってくれる音源です。もちろん使いこなせば、未知のサウンドを自由に鳴らすことが出来るでしょう。

私自身、発売以来何年も使って来ていますが、まだまだ全てを使いこなしているとは言えません。シンセの音ならまず最初に立ち上げるお気に入りのプラグインです。

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■メーカーサイト
https://www.minet.jp/brand/spectrasonics/omnisphere2/

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