Review
カテゴリーの枠に収まらない高音質を実現した完全ワイヤレスオープンイヤホン、Beyerdynamic / Verio200 クイックレビュー
イヤホン/ヘッドホン、有線/無線、音楽鑑賞には様々なスタイルがありますが、昨今進化が目覚ましいのがオープンイヤー型のワイヤレスイヤホンです。
耳を塞がないことによってインナーイヤー型と比較して耳への負担が軽減できることや快適な装着感、また外音を聞きながら音楽が聞けるということでリモートなどの多様化する職場環境、こちらもブームの外でのワークアウトなどでの需要が高まっています。
今回は、モニターヘッドホンメーカーとして絶大な信頼と歴史を誇るbeyerdynamicがこのオープンワイヤレスイヤホン市場に初参戦、その実力のほどを機材店スタッフとしてレビューして参ります。
サウンドクォリティはカテゴリートップクラス
インナーイヤー型と純粋に音質で比較して、「妥協」ではなく「選択肢」となるレベルのクォリティ
オープンイヤー型ワイヤレスイヤホンのサウンドというとどんなイメージですか?少し前であれば、中低音が痩せたシャリシャリとした音、最近であれば高級機はインナーイヤー型に及ばないまでもそれなりに低音も出る高音質なものも増えてきている、といった印象ではないでしょうか。
筆者の印象はそれに加えて「小さな音量での再生時に低音が痩せる」といったものがあります。
オープンイヤー型の用途の想定として、それなりに小さい音量で音楽を再生するというシーンは少なくありません。音漏れを避けたいシーンや、とっさの呼びかけに応じなければならないときなどです。
昨今の高級オープンイヤー型は、最大に近い音量で再生した際はかなり満足感のある迫力のあるサウンドを提供しますが、この小さな音量での再生時にいわゆるオープンらしい痩せた印象の音になるものが多いと思っていました。
しかし、このverio200は小さな音量でもあまり音楽全体のバランスが崩れません。低音もしっかり知覚することができ、音楽鑑賞としての満足感が高いです。ながら聞きという用途を想定したときこれは大きなアドバンテージでしょう。モニターヘッドホンの老舗メーカーだけあって音のディテールを再現する能力も非常に高く、それでいて尖った部分がないので気持ちよく音楽を聞かせてくれます。
また、耳の挟み方をいろいろ変えてみたのですがサウンドの印象がそこまで変わることがないため、耳の形にあまり影響を受けず実力を発揮できそうです。
インナーイヤー型とのサウンド比較
筆者の手持ちのSony WF-1000XM4と比較して視聴してみました。
鼓膜をつくような派手な低音が欲しい場合はさすがにインナーイヤー型であるWF-1000XM4に分がありますが、オープンワイヤレス型のメリットとして、耳と距離があることに由来する「音場の広さ」があります。verio200も例外ではなく、インナーイヤー型と比べて閉塞感がなく長時間の視聴においてもストレスがありません。この音場の広さを評価するなら、サウンドが好きだからverio200を選ぶ、という人がいてもおかしくないレベルまで洗練されているなと感じました。
ちなみに音量という意味ではインナーイヤー型ほどの大音量で聞くことはできないため、とにかく大きな音で音楽が聞きたいという方には選択肢にならないかもしれません。筆者の感覚ではverio200でも「これ以上の音量では普段音楽を聞かないな」というややうるさいレベルまで音量を上げられるので十分です。
装着感や操作感についても高い品質でまとめられいてメーカーの気合を感じる製品
フックは柔らかいシリコンで覆われたメモリーワイヤーで、本体を耳のくぼみにはめ込み、挟み込むような装着感。
筆者は耳が極端に大きい人類であるため、耳の枠、いわゆる対耳輪下脚(ついじりんかきゃく)に圧迫感があり長時間の使用で痛みが生じてしまいましたが、通常のサイズの耳の方であれば問題なく着用できると思います。
専用アプリでは5バンドイコライザーを備え、前述の音質を更に自分好みにカスタマイズすることが可能。
また、シングルからトリプルまでのタップ操作、2秒間の長押し操作に対応し、好きな機能をあてがうことができます。
ここで特筆しておきたいのが選択肢に「None」がある点。ワークアウト中ぶら下がるようなトレーニングを行うと腕でイヤホンに触った際誤操作してしまうということはよくありますし、このverio200は、ちょっとした位置調整などでもかなりタッチに繊細に反応します。シングルタップで操作できないようにしておけるのは地味ですがあるとないとで大違いのとてもありがたい機能です。
イヤホン単体でのバッテリー持ちも8時間、通常の使用で切れることはないでしょう。
気になる点
オープンイヤー型なので当然なのですが、それを踏まえてもかなり音漏れします笑
前述の「挟み方を試行錯誤しても聞こえ方にそこまで影響がない」という点と関連してると思うのですが、おそらくスピーカーの指向性が比較的ゆるいのではないかと。スマートフォンでの音量設定6割あたりから、横で聞いてもらった当店スタッフに「電車で隣の人がこれだったら嫌だ」と言わせるレベルで漏れます。
35000円とカテゴリーでは最高クラスの価格帯である中で、例えば競合他社はオープン型でありながらノイズキャンセリング機能がついたモデルや、ノイズキャンセリングの技術を応用して音漏れするサウンド軽減したり、激しいワークアウト、天候に耐えるよう高い防水、防塵性能を備えたモデルを出しています。(※verio200もIP54とある程度の防水は可能です。)
もちろん初のオープンイヤー型として着用感、アプリなどこだわりは詰まっていますが、もう一声オプションが欲しかった気持ちも否めません。
まとめ
サウンドは老舗メーカーの意地を感じる価格帯最高クラスのクォリティ。アプリや装着感も高いレベルでまとめられた非常に魅力的なイヤホンだと思います。競合他社の同価格帯製品が、機能面でもうひと工夫個性を出してきているところを、ど真ん中、音質で勝負してきた印象です。
とにかくいい音の完全ワイヤレスオープンイヤホンが欲しいという方に、実用面の不安なくオススメできます。
ただ前述の通り、音漏れを気にしなければならないようなシーンで主に使う場合は、性能を十分に活かせない可能性があります。用途と着用感がマッチすれば、価格に対して後悔しない体験を提供するでしょう。
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