こんにちは、宮地楽器RPM シンセサイザー担当のOです。
今回は、発売が大きな話題となったアメリカのミニ・セミモジュラーシンセサイザー「Modern Sounds/Pluto」について解説いたします。
まだまだ日本語資料が少ない製品ですが、国内でも注目度が高くSNSで演奏動画をあげられている方をお見かけします。
本記事では「Pluto」の機能と使用感を詳細に解説いたしますので、既にお持ちの方もこれから購入しようか検討されている方も是非御覧ください。

「Pluto」とは

「Pluto」はミシガン州アナーバーに拠点を置くメーカー「Modern Sounds」によって作り上げられた、個性的なシンセサイザーです。
コンパクトで持ち運びやすい筐体にも関わらず非常に多くの機能を備えており、2OSC(2ボイス)、2シーケンサー、ミニキーボード、空間系エフェクト、クオンタイズ機能のほか、SyncやMIDI I/O、Audio Inputまで備えています。

「Modern Sounds」は「Pluto」を開発するにあたり、Buchla Music Easelから80年代のCasioシンセサイザーに至るまで様々なポータブルシンセサイザーを研究し、その要素を盛り込んでいます。
多機能ですが要素が上手くまとまったデザインがわかりやすく、ストレスフリーに音を探求することができます。

フレーズを生成する機能に優れており、直ぐにいい感じのシンセフレーズを作り出すことが出来ます。

機能の概要(5つの機能セクション)

「Pluto」の機能は大きく分けて5つのセクションに分けられます。
筐体のパネルも太線で区切られているのでこちらを目印にすると良いかと思います。

Moons(オレンジのノブ)

Plutoのモジュレーションの核となるセクションで、5つのパルス信号出力と、パルス幅調整、クロックと出力タイミングに適用されれるディバイダーやランダマイザー等の機能があります。

Sequence 1 + Voice 1(赤のノブ)

1つ目のシーケンサーとボイスの組み合わせは、4つのタッチパネルで演奏することも、パルス信号でシーケンサーを走らせることも出来ます。その他、シーケンサーに連動する3つのパルス信号出力が設けられており、ボイスには外部音を取り込むが可能です。

Sequence 2 + Voice 2(青のノブ)

2つ目はシンプルで、パルス信号によって機能するシーケンサーとボイスの組み合わせです。ボイスには外部音をアサインできませんが、こちらのボイスにのみFMパーカッションモードがあります。

Effects(緑色のノブ)

ボイス1と2がエフェクトセクションを通り、アナログスタイルのディレイやグリッチ・ディレイ、ループ・ディレイ、リバーブ等を生成します。

Scale(灰色のノブ)

SCALEは、シーケンサーが演奏するノートをコントロールします。ノブでスケールを指定する他、MIDIや外部音からクオンタイズ音階を設定することも可能です。

機能詳細

■Moons

Moons

冥王星の惑星にちなんで名付けられた5つのパルス信号出力が、Plutoを操作する各の部分となります。
シンプルなクロック分割から、ポリリズムやランダムに進化するパターンなど、様々なリズム生成することができます。

普段からモジュラーシンセを触っている方なら、モジュレーションソースにパルス信号しか用意されていない点を不思議に感じるかと思いますがご安心下さい。「Level(VCA)」や「Voice(音色)」のインプットは入力されたパルス信号の長さに対応して自動でエンベロープが適用されます。
Sequence 1の「STEP INVERT」「THRESHOLD」「TOUCH」といった出力もすべてパルス信号である点もポイントです。

CLOCK

5つの「Moons」出力のベースとなるテンポを設定します。一般的なクロックノブと逆で、時計回りで遅くなり、反時計回りで早くなります。時計回りに回し切るとエクスターナルモードに切り替わり、MIDI及びSync信号にテンポが追従するようになります。

SPREAD

SPREADノブは「Moons」出力のタイミング関係を調整するためのものです。
中央から時計回りに回すとクロックが分割されていき、反時計回りにまわすと出力がランダマイズされます。
ランダマイズは回していくほど適用度が増していき、ノブを中央に戻すとパターンが固定されます。

WIDTH

WIDTHノブは、「Moons」信号のパルス幅を調整します。
ノブが中央の状態では、すべての出力のパルス幅が非常に短く設定されます。
時計回りに回すと、5つの「Moons」出力のパルス幅が左から右にかけて大きくなり、反時計回りにまわすと左から右にかけて大きくなります。

SHUFFLE

SHUFFLE入力が信号を受け取ると、CHARONの出力はSTYXに、STYXはNIXといった具合に、「Moons」出力の各パターンが左から右にシフトします。

 

■Sequence 1

1つ目のシーケンサー出力はVoice 1 のピッチにアサインされています。
各シーケンス・ノブを全て最大まで回すと、シーケンサー出力はランダムモードに切り替わります。

まずは、「STEP」と「LEVEL」入力のパッチング状況によってそれぞれ3つのモードに自動に切り替わる点をおさえましょう。

1. LEVELとSTEPになにもパッチされていない場合

タッチパネルが鍵盤のように機能し、演奏することが可能です。各パネルの出力は対応するステップのノブで調整可能です。

2. LEVELにパッチされており、STEPはパッチされていない場合

シーケンサーは走らずステップが固定された状態となり、「LEVEL」入力への信号に反応してVoice 1 が発音されます。
タッチパネルから固定されるステップを指定することが可能です。

3. STEPがパッチされている場合

「STEP」入力への信号に対応して、ステップが進行します。
タッチパネルを触ると対応するステップが方向転換ポイントとなり、シーケンサーの進行方向が反転するようになります。
「LEVEL」入力にパッチがされていない状態では、「STEP」入力への信号が「LEVEL」入力にノーマライズされるため、スッテプの進行に対応してVoice 1 が発音されますが、「LEVEL」入力にパッチがされている場合はノーマライズが解除されるため、ピッチと発音タイミングをそれぞれ制御できます。

STEP INVERT

「STEP」入力への信号に対して反転されたパルス信号を出力します。

THRESHOLD

進行先のステップのノブの位置が正午を超えている際、ハイ信号を出力します。
Voice 1 のモードを「Audio input」に設定した際は入力音に反応するように切り替わります。

TOUCH

パッドがタッチされている間、ハイ信号を出力し続けます。

■Sequence 2

2つ目のシーケンサー出力はVoice 2 のピッチにアサインされています。
LEVELとSTEPの関係性はSequence 1 と同様です。
各シーケンス・ノブを全て最大まで回すと、シーケンサー出力はランダムモードに切り替わります。

DIRECTION

「STEP」がパッチされた状態で信号を受けるとシーケンサーの進行方向が変転し
パッチされていない際はランダムなステップに移動します。

■VOICE

Plutoには2つのVOICEが用意されており、それぞれ音量をコントロールする「LEVEL」入力と、音色をコントロールする「VOICE」ノブ及び「VOICE」入力があります。
「LEVEL」入力と「VOICE」入力は、入力信号のレートとパルス幅によって自動的にエンベロープが適用されます。

Voice mode switch

音色にはそれぞれ3つのモードががり、トグルスイッチで各自設定が可能となっております。

・Voice 1
1. Classic – Sine、Triangle、Sawをブレンドします。
2. Wavetable – 32種類のウェーブテーブルをモーフィングします。
3. Audio Input – オシレーターの代わりにAUDIO IN信号を使用できます。
「VOICE」ノブで入力音にピッチ追従したオシレーターの追加が可能です。
このモードを選択すると、THRESHOLD 出力はエンベロープ・フォロワー出力(CV出力ではない)になります。ドラムマシンのオーディオをトリガー等に変換して使ってみましょう。

・Voice 2
1. Classic – Sine、Triangle、Sawをブレンドします。
2. Wavetable – 32種類のウェーブテーブルをモーフィングします。
3. Percussive – ウェーブテーブルとFMオシレーターがブレンドされた音色。様々なパーカッシブ・サウンドを生み出します。この音色はアタックが速く、ピッチ・エンベロープやFMモジュレーション、ノイズ等が適用されます。より長いエンベロープを用いて演奏するとメロディアスなFMサウンドにもなります。

■Effects

Plutoにはディレイとリバーブのエフェクトが内蔵されており、Voice 1とVoice 2の両方に適用されます。
エフェクトの種類は、アナログ・スタイルのディレイから、グリッチなディレイ・エフェクト、シマーなリバーブまで多岐にわたります。

INTENSITY

「INTENSITY」ノブは、エフェクト・シグナルのレベルと、ディレイ・フィードバックやリバーブ・シマーなど、その他のパラメータをコントロールします。
ノブを時計回りに回しきると、ディレイ信号がループし始めます。
入力されたオーディオはループに的適用されません。

TIME

TIMEノブはディレイ・タイムを調整し、異なるディレイとリバーブのエフェクト・モードをブレンドします。

■SCALE

各ボイスのピッチにクオンタイズを適用することが出来ます。
「SCALE」ノブを反時計回りに回しきるとクオンタイズが解除され、時計回りに回していくとCキーの様々な音階を指定できます。
時計回に回しきると「Listen mode」に切り替わり、外部ソースに基づいてノートをクオンタイズするようになります。
MIDIノートもしくは外部入力の検出した最後の3つの音程を保存しクオンタイズする他、MIDIでコードを送信すると、これを音階として使用しクオンタイズに設定することが可能です。

■MIDI

Plutoは、3.5mm TRS(Type A)とUSB経由でMIDIデータを送受信します。
Ch.1でノートを受信し「STEP」入力にパッチがされていないボイスが反応します。

また、シーケンサー1のノートをCh.1、シーケンサー2のノートをCh.2で送信します。
シーケンサー1の「STEP」入力にパッチされていない場合、タッチパネルの信号が変わりに送信されます。

その他、各パラメーターをccにてコントロール可能です。

所感

実際に手に取ってみたら、爽やかな見た目に反してズシッとした重みがあり「中身が詰まってる」感じがしました。

ノブの重みやジャックのキツさも程よく、安心して弄ることが出来ます。

「この状態では、この機能が発動する」といった決まり事が多く触り始めは戸惑いますが、覚えてしまえば大変便利です。

サウンド面に関しては、Voiceの音自体は1OSCでシンプルなものの、各ボイスモードの音色のモーフィングが面白く、上手くパッチングすれば複雑な音作りも可能なように感じます。音に少し飽きてきてしまっても、外部入力からからOSCを追加すればより多彩なサウンドメイクが可能です。

空間系エフェクターの作りが非常に秀逸で、少ないツマミで様々な効果を作り出すことが出来ます。アナログ感のあるディレイから、古いデジタルリバーブの様な音まで多彩なキャラクターを持っています。エフェクターの効き方も分かりやすく効果的で、アンビエントやドローンに適しているように感じます。エフェクターのパラメーターをモジュレーション出来ないのがやや残念ですが、Elektron等のCC信号にLFOをアサインして出力できる様な外部機器と連動させと面白そうです。

モジュラーシンセサイザーのヘビーユーザーとしては、VCA等のエンベロープがパルス信号を元に自動的に生成される仕組みで細かく調整できない点が少々歯がゆいですが、ある意味ではPlutoの音のキャラクターを決定づけている要素でもあり、いい味として機能する場面も多くありました。

「Moons」の出力を様々なインプットへパッチし、「SPREAD」と「WIDTH」で全体を大きく変化させて行くと、フレーズや音色が変化し続けていつまでも没頭できます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

「Modern Sounds/Pluto」はコンパクトで多機能ながら、ミニマルさも感じさせる唯一無二のキャラクターを持つ製品です。

単体でも面白いですし、他の機材との連携にも優れているのでライブセットの飛び道具や、音楽制作環境のスパイスとして傍らにおいておくのもの良いかもしれません。フレーズ作りに適した機能が多くあるので、曲作りで困った際にも頼れる味方になりますね。

現在RPM店頭に展示機をご用意しておりますので、お気軽にご来店ください。

 

 
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