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リアルタイムパフォーマンスに適したシーケンサー – Play All Day / PlayFader 解説 & レビュー by Yebisu303
皆様こんにちは!トラックメイカーの Yebisu303 です。
今回は宮地楽器RPMより販売中の、play all day PlayFaderについて、デモ演奏を交えつつ解説・レビューしていきたいと思います。
モジュラーシンセやグルーヴボックスに興味がある、又は既にライブパフォーマンスしている方の参考になるよう、セットアップ手順についても詳細に解説していきます。
是非最後までお付き合い下さい!
製品概要
PlayFaderは2Chのポータブルシーケンサーで、各Ch毎にCV/GATE、MIDI出力が可能です。
PLAY A/BボタンとFADERの操作をループシーケンスとして記録し、複雑なフレーズやモジュレーションを組み立てられます。
更にそこへトランスポーズやFUN FX(記録した演奏情報に追加できる、リトリガー、スライス、ピッチベンド、ピッチLFO等のエフェクト)を追加し、リアルタイムパフォーマンスを楽しめます。
MIDI, CV/GATEとの接続性
MIDIの接続には3.5mm TRS MIDIケーブル(Type-A)を使用し、出力チャンネルやCC(コントロールチェンジ)番号を柔軟に設定できます。
CV/GATEは2系統用意されていて、各メーカーの規格に応じた電圧スケーリング※1を選択できます。
また、各チャンネルではMIDIとCV/GATEを同時に使用出来ますので、記録されたフレーズを基に、MIDI音源の演奏とモジュラーシンセのCVコントロールを同時に行う…といった事も可能です。
※1 v/oct (Roland等)、1.2v/oct (BUCHLA)、Hz/oct (KORG)の3種類から選択可能
モバイルバッテリーで動作可能な電源ケーブル
製品にはMyVolts 9v Ripcord USB電源ケーブルが付属しており、USB経由での給電が可能です。
USB充電器等は勿論、ノートパソコンやモバイルバッテリーからも供給出来るので、野外での演奏動画撮影にもぴったりですね。
デモ演奏
まずはこちらのデモ演奏をご覧下さい。
上記の動画では、モジュラーシンセサイザーとElektron Syntaktを使用したElectroというジャンルの音楽を演奏しています。
各機材の接続は下記図の通りです。
- SyntaktからPlayFaderへMIDIクロックを受信し、テンポを同期
- PlayFaderのCh BからMIDI経由でSyntaktに接続し、内蔵シンセ音源をシーケンス
- PlayFaderのCV/GATE出力をモジュラーシンセに接続し、x0x Heart(TB-303クローンモジュール音源)をシーケンス
- モジュラーシンセとSyntaktのOutputをOTO Machines Bébé Chérie(アナログミキサー)にまとめ、PA段に出力
設定手順
この章では、他の楽器やシーケンサーに合わせてPlayFaderを演奏するために必要な設定を解説します。
MIDI CH
まず「FUN + CLEAR」を押しながら「PLAY A/B」ボタンをタップし、設定したいチャンネルを選択します。
FADER Aを使用して「A-CHAN」または「B-CHAN」を選択してから、「FADER B」を動かしてMIDIチャンネル(1-16)を設定します。
スケール(ルート、構成音)
「FUN + CLEAR + SCALE」を押しながら、ユーザースケールを設定します。
FADER Bを動かしてルートオクターブ(0-4)、FADER Aでルートノートを設定します。
この画面のまま任意のノートナンバーにカーソルを合わせた状態で「PLAY B」ボタンをタップすると、そのノートをスケールに含める/含めないを切り替えられます(Uマークで有効、_マークで無効)。
クォンタイズ
「TIME」を押しながら「FADER A/B」を動かすと、各Chのゲートのリトリガー周期を設定できます。
FADERを下げるほどリトリガーの周期が短くなり、逆に上げるほど長くなります。
FADERを一番下へ下げた状態(7セグLEDに「–」と表示された状態)ではクォンタイズを行わず、FADER操作をそのまま記録できます。この設定はCVでのモジュレーションを行う際に最適と言えます。
ゲートの長さ
「TIME + SCALE」を押しながら「FADER A/B」を動かすと、各Chのゲート長を調整できます。最小値では手動のトリガーパルスが生成されます。
少しずつゲート長を変更しながら上手くループフレーズへ記録していくことで、細かいゴーストノートが入ったような凝ったフレーズを作る事も可能です。
ループの長さ
「FUN」と「TIME」ボタンを同時に押しながらFADERを動かすことで、記録するループの長さを「AUTO」「16」「32」「48」「64」の中から選択できます。
「AUTO」を選択した場合、ループ長は録音したデータに基づいて自動的に設定されます。
パッチの保存
全ての設定を終えたら、忘れずパッチの保存をしておきましょう。
一度PlayFaderの電源を切ってしまっても、再度パッチをロードする事で設定を復元できます。
まず「FUN + SCALE + CLEAR」を長押ししてパッチメニューを開きます。
そのままFADER Aを動かして保存先のスロットを選択し、「LOOP」を長押しすると保存、「LATCH」を長押しするとロードできます。
パフォーマンス中の操作
この章では、PlayFaderで演奏中に行う主な操作を解説します。
MIDI, CV/GATEのトリガー
「PLAY A/B」をタップしてGATEをトリガーします。
また、FADERを動かしながら同じChの「PLAY」ボタンをタップすることで、FADERの位置に対応したピッチでMIDIノートやCVを出力できます。
トリガー情報をLOOPへ記録
「LOOP」を押しながらFADERと「PLAY A/B」を操作すると、演奏情報をLOOPに記録できます。
LOOPバッファの削除
「CLEAR」を押しながら「PLAY A/B」を押すと、その間だけLOOPに記録された演奏情報をクリアできます。これは、LOOPに記録した演奏のミスをピンポイントで削除するのに便利な機能です。
また、「CLEAR + LOOP + PLAY A/B」を1秒間保持すると、LOOPに記録された演奏情報が全てクリアされます。
LATCH
「LATCH」を押しながら「PLAY A/B」をタップすると、記録されたLOOPの再生が止まり、FADERを動かした時だけノートがトリガーされるLATCHモードに切り替わります。
(ディスプレイ一番下が「U」表示の場合はLATCH有効、「_」表示の場合はLATCH無効)
また、同様の操作をもう一度行うと、LOOPの再生に戻ります。
この操作を行うことで、基本的にはLOOPを再生しておき、曲の展開が変わるタイミングでLATCHしてソロ演奏を行い、再びLOOPの再生に戻る…といったパフォーマンスを行えます。
LIVE TRANSPOSE
「SCALE + CLEAR + PLAY A/B」を押しながらFADERを動かすと、LOOPに記録したシーケンスを半音単位でトランスポーズできます。
もしユーザースケールを設定している場合でも、そのスケールから外れないようにトランスポーズが行われるので、音楽的に破綻する心配なくパフォーマンスを行えます。
FUN FX
FUN FXはリアルタイムパフォーマンスに最適な6種類のノートエフェクトです。
使う前に、まずFXの種類選択とパラメータの調整を行う必要があります。
「FUN + CLEAR」を素早く2回押した後、そのまま離さずにFADER Aを動かすと、FXの種類を選択できます。
次に「FUN + CLEAR」を一度離し、今度は「FUN + CLEAR」を1回だけ押しながらFADER A/Bを動かすと、FXの種類に応じたパラメータを調整できます(もちろん、FXを使っている最中にも変更可能です)。
その後「FUN + CLEAR + PLAY A/B」を押すと、その間だけFXが適用されます。
FX毎に得られる効果は下記の通りです。
ROLL:FUN FXをかけたタイミングからFADER Bで指定した長さ分の演奏情報をリピート
SLIDE:FADER Aで決めた位置からFADER Bで指定した長さ分の演奏情報をリピート
SUSTAIN:LOOPに記録した演奏情報をリトリガ(FADER Aでゲート長、FADER Bでリトリガの速さを調整)
BEND:ピッチベンド(FADER A/Bで各Chのベンド幅(CVの場合は半音刻み、最大±1オクターブまで)を調整)
※MIDI音源の場合、ベンドレンジは音源の設定に依存
LFO:ビブラート(FADER AでSPEED、FADER BでDEPTHを調整)
RAMDOM:ピッチへのランダムLFO(FADER AでSPEED、FADER BでDEPTHを調整)
エフェクトは記録したLOOPに対して非破壊的で、「FUN + CLEAR」又は「PLAY A/B」ボタンのいずれかを離すと効果が解除され、元のLOOP再生に戻ります。
まとめ
長所
パフォーマンス性の高さ
縦FADERを使った直感的な操作の分かりやすさ、偶発的なフレーズを作り出せる面白さ、素早くソロ演奏を繰り出せる機動力の高さ等、他のシーケンサーには無い魅力を感じました。
また、演奏する楽曲に合わせた柔軟なキー・スケール設定が可能で、最大8つまでパッチを保存できる為、30-60分程度のライブセットを披露するのに充分な保存領域を備えていると言えます。
キュートなルックス
なんといってもこのレトロでかわいい筐体デザイン、個人的にかなり刺さりました…!
パフォーマンス中のブースに華を添えてくれるのは勿論、所有欲も満たしてくれるデザインですね。
本体と蓋をまとめる為に同梱されている虹色のリストバンド等、付属品にもこだわりを感じます。
運搬時の安全性の高さ
裏蓋が保護カバーとして使えるなど、ライブパフォーマンスの為頻繁に機材を持ち出すユーザのニーズも考えられているなと感じました。
短所
同時押し操作の多さ
6つのカラフルなファンクションボタンにはそれぞれの役割が名付けられていて、シンプルな操作に関してはとても使いやすい反面、ある程度複雑な操作を行おうとすると3つ・又は4つの同時押し操作を求められる為、しっかりマニュアルを読んで覚える必要があります。
ユーザの演奏スタイルによっては必ずしも全ての操作を把握する必要はありませんが、慣れないうちは同時押しするボタン同士の関連性や法則性が掴みづらい為、使いこなすまでのハードルは若干高めかもしれません。
最後に
いかがでしたでしょうか?
直感的な操作で自由自在にパフォーマンスを行えるPlayFader、モジュラーシンセやグルーヴボックスでパフォーマンス・制作を行う上で新しいアプローチを取り入れたい…という方にとって、良い選択肢の1つになるのではないでしょうか。
最近になりモノトーンを基調とした新カラバリモデルのPlayFader mnml(ミニマル)もリリースされました。こちらはスタイリッシュなライブセット・制作環境にもマッチしそうですね。
宮地楽器RPM店舗ではこちらのPlayFaderも実際にハンズオンで体験出来ますので、お近くの方は是非足を運んでみて下さいね!
※記事はファームウエアV1.1をベースに執筆しています。バージョンによっては記事内容と実際の操作が異なる場合がございます。
プロフィール
Yebisu303
Acid House, Detroit Techno, Electroに強い感銘を受け、20代後半よりトラック制作、Live活動を開始。
無類のハードウェア機材愛好家でもあり、日々自身のYouTubeチャンネル「Freaky Tweaky」でマシンライブやデモンストレーション動画を公開している。
近年ではKORGやSONICWARE製品のプリセットサウンド作成を担当するなど、その活動は多岐に渡っている。
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