Spectrasonics キーボード・コレクション「KEYSCAPE」に迫る!

 

宮地楽器レコーディングスタッフが、実際にしっかりと使ってみて話題の製品の実力を実体験レビューする本シリーズ!今回のテーマは「Spectrasonics/Keyscape」です!
今回は、非常に数多くのサウンドが収録された鍵盤楽器総合音源「KEYSCAPE(キースケープ)」の中から、筆者のお気に入りのサウンドをいくつかピックアップし、ご紹介させて頂きます。

さて、記事の初っ端から余談ですが、KEYSCAPEが気になっているという方に多い意見、それは「メーカーのデモが格好良すぎて結局よくわからない」、非常に同感です。そして、実際に店頭で試された方のご意見。総じて「1つ1つ弾いて(聴いて)みると、やっぱり良いね!」こちらも非常に同感です。

魅力的すぎて逆に魅力が伝わりきらないKEYSCAPE、個々のサウンドが「いかに洗練されているか」「弾いていてキモチいいか」ということを、本記事で持て余すことなく語ります!メーカーデモほど格好良く華やかではない「普通」なレビューで、ぜひこのライブラリの実用性を実感して頂ければ幸いです。

製品概要:KEYSCAPE(キースケープ)とは

まさにキーボード・コレクション。ピアノ・エレピを始めとし、ヴィンテージシンセやトイピアノ、チェレスタ等のベル系、ちょっと特殊な鍵盤楽器まで、様々な鍵盤楽器のサウンドが収録された音源です。500以上もの最高峰キーボード・サウンドを収録する膨大なライブラリ、36の楽器モデル、ハイブリッドな組み合わせによる ” Duo ” パッチが収録されています。

 

収録モデルリスト

https://www.spectrasonics.net/products/keyscape/keyscape-models.php

代表的な&お気に入りのサウンドをレビュー!

前置きはさておき!魅力的なサウンドがとにかくたくさん詰まったKeyScapeの中から、いくつかの音源をご紹介します。以下のデモサウンドは、初期設定されているプリセットから全くパラメータをいじらず、コンプ等のエフェクトも一切かけていない素の音源です。

〜〜〜は選択したプリセット名

アコースティック・ピアノ

LA Custom C7 Grand Piano

非常に上品な音色だなと感じます。輪郭も粒も比較的丸めですが、Highの伸びがクリアですね。キラキラと輝かしいサウンドでもなく、メロウで優しいサウンドでもない、いわば「ちょうどいいサウンド」だと思います。派生しているプリセットの選択で、オケから浮かせることも馴染ませることもできるので、様々な用途に使える音源ではないでしょうか。

Wing Tack Piano

タック・ピアノ(ホンキートンク)のサウンド。もちろん「THE・ホンキートンク!」という曲でもばっちり合ってくれるのですが、今回はあえてアンビ系のデモを弾いてみました。
この音源の何が魅力って、とにかくタッチノイズとペダルノイズの雰囲気です。デモの一番最後の低音をお聴き頂けると分かるかと!賑やかな雰囲気にはもちろん、逆に退廃的な雰囲気にもマッチしてくれるこのホンキートンクも、グランドピアノと同じく万能なサンプルですね。

エレクトリック・ピアノ

Rhodes Classic Suitcase & LA Custom Suitcase

Classic
倍音の多さがRhodes感を表現しています。StageのLINE録りのサウンドではなく、Suitcaseの箱鳴りも含めた「Rhodes全体のサウンド」がしっかり収録されています。癖のないサウンドのため、使いやすいのではないでしょうか。エフェクト等の後処理がやりやすいと思います。

LA Custom
DynoMy Effectを搭載した言わば「改造版」のRhodesのサウンド。これの実機は、通常のRhodesよりもコーラスとリバーブが深く、キラッとした上品なサウンドが特徴です。Keyscapeの音源もその差がしっかりと表現されています。「綺麗なRhodes」が欲しい時に持ってこいですね。

Wurlitzer 200A&140B

200Aも140Bも、とても雰囲気がありますね。音のリリースの部分がエレピらしさを醸しています。140は、リードの震える感じが実機っぽいです。(ちなみに数字が大きいほど新しい型番で、流通しているWurlitzerはほとんどが200Aなんだそうです。140Bの実機はとてもレア!)
弾く強さや和音の取り方によって、すごく本物っぽいニュアンスが聴こえる瞬間があります。動画などで実機のサウンドを分かった上で作り込めば、かなりの所まで行けるでしょう。

Vintage Vibe

貴重なVintage Vibe音源。実機のサウンドに相当近く、特徴がよく捉えられています。
金属的なキラキラと輝かしいサウンドが非常によく再現されていますね。タッチ感もバッチリです。粒ひとつひとつが際立ってくれるタイトな実機の雰囲気を、しっかりと表現できる音源です。

キー・ベース

Rhodes Piano Bass

サウンド的には、初期のフェルトハンマーのものに近いですね(後期はゴムチップハンマー)。ベロシティを高めに設定してあげると、より実機感のあるブンっとしたサウンドが得られるでしょう。初期のモデルは速いフレーズが苦手ですが、Keyscapeはそんなパッセージにも対応できてしまいます。本来用途の限られるRhodes Bassを、幅広く使用できるというのは、この音源の魅力ですね!

ベルトーン・キーボード

最も「いいじゃん!」と盛り上がったカテゴリが、このベル系サウンドです(笑)

Celeste

鍵盤型の鉄琴、チェレスタの音源です。聴いていて非常に心地良いですよね。音の粒自体はかなり深い印象で、倍音部分もまろやかで伸びのあるサウンドです。とても上品ですがしっかりと存在感のある、実機のサウンドのイメージにかなり近いと思います。

Dulcitone

1860年代に開発されたこの「ダルシトーン」は、「フェルトのハンマーが音叉に当たって音が鳴る」という仕組みの鍵盤楽器です。正直、Keyscapeの全ライブラリの中で一番好きなサウンドです!
コンプ感のあるアタック、絶妙なリリース、音の芯を囲う若干ノイジーな空気感、などの要素が融和して作り出されるこの独特な雰囲気は、他の音源では絶対に表現できないでしょう。

Toy Piano – Glock

このキラキラ感、キンキン感、最高ですね…!!金属のビーターでグロッケンを叩いたサウンドの印象に近いでしょうか。つんざくような痛さを伴わず、これだけブライトなサウンドを自分で作り出すのは結構難しい…。オケからしっかりと浮かせたいキラキラのパッセージを入れるのに最適かと思います。意外にも侮れないトイピアノ音源ですが、特にKeyscapeのトイピアノシリーズは実用性抜群ですね。

ウィンド・キーボード

Harmochord – Musette

ハーモコードは、1960年頃にドイツで開発された鍵盤です。アコーディオンは蛇腹を押したり引いたりして空気を送り込みますが、このハーモコードは、各鍵盤をトリガーとした電動送風機を用いて発音するそうです。
今回は、あえて通常のプリセットではなくMusette風プリセットを使用。弾いて最初に口から出た感想が「うわあ!めっちゃMusette!!」でした。普通のアコーディオン音源でここまでの雰囲気を表現しようと思うと、後処理でただならぬ努力が必要ですよね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
OmnisphereやTrilianと同様、「プリセットをそのまんま使う」だけでかなりのパフォーマンスを発揮してくれるのが、このKeyscapeです。大量の音源が入っているとはいえ、楽器の種類だけで言えばそこまで多くはないため、お気に入りのサウンド探しに費やす時間もそこまで多くはないかと思います。

「このサウンドが欲しかった!」という決め打ちの方も、「色んな雰囲気の音源が欲しい」「一風変わった音源で遊びたい」という方も、様々なニーズに対応してくれるライブラリ「Keyscape」。個々のクオリティが高いサウンドがこれだけ詰まっているので、コストパフォーマンスに関しては最強に近い商品ではないでしょうか。

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■メーカーサイト
http://www.minet.jp/brand/spectrasonics/keyscape/

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