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モジュラーシンセでブレイクビーツを作ってみよう!
モジュラーシンセでブレイクビーツを作ってみよう!
宮地楽器RPM(Recording Proshop Miyaji)、シンセサイザー担当のOです。
モジュラーシンセといえばオシレーターやフィルター等、文字通りシンセサイザーの機能をフューチャーしたモジュールのイメージが強いですが、サンプラーモジュールもまた非常に奥深いジャンルです。
今回は人気サンプラーモジュールの一つである「Erica Synths/Sample Drum」と、シーケンサーの「Noise Engineering/Mimetic Digitalis」を用いた、ブレイクビーツの作り方を解説いたします。
「Erica Synths/Sample Drum」は2トラックのサンプラーモジュールで、柔軟な音作りが可能です。
「Noise Engineering/Mimetic Digitalis」は16ステップ×4トラックのシーケンサーモジュールで、細かな設定から派手なパフォーマンスまでこなせなす。
◎ブレイクビーツとは
ブレイクビーツ(breakbeats)とは、サンプリングしたドラムのフレーズを分解・再構築して独特のリズムを作り出す音楽制作の方法、またはジャンルの一つです。
この「サンプリングしたフレーズの分解・再構築」という処理をSample Drumでは非常に簡単に行なえます。
◎Sample Drum & Mimetic Digitalisでのブレイクビーツの作り方
1.サンプルのアサイン
スタートメニューから「LIBRALY」を選択し、サンプルデータのアサインを行います。
今回は付属SDカードの「BREAKS」フォルダーに入っているドラムループのサンプルを使用します。
気に入ったサンプルを見つけたらエンコーダのA(ADD)を押しRAMにサンプルをロードします。
複数のドラムループを用いると面白いフレーズが作りやすくなるため、たくさんのサンプルをロードしておきましょう。
2. サンプルのスライス
スタートメニューから「SAMPLE」を選択し、ロードしたサンプルをエディットしましょう。
「SAMPLE」画面でAを押すとエディットメニューが変わり、スライスに関する画面が表示されます。
Dのエンコーダを回してスライス数を選択し、Fのエンコーダを押してスライスを実行します。
今回は、1小節分のループに対し、1/8拍でトリガーを送信しているので、スライスは「8」とします。
※Sample Drumはタイムストレッチ(ピッチを保ったままサンプルの再生速度を変化させる)機能を持っていません。サンプルのBPMとクロックのテンポが大きく違う場合、スライス同士が途切れたり、うまく繋がって流れない場合があります。こういった際は、あらかじめBPMを調整したサンプルを用意するか、Pitchを調整して再生速度を変化させることで対応しましょう。
3.CVinを設定
Erica Synths/Sample Drum は1トラックにつき3つの CV in を備えており、任意のパラメーターへアサインすることができます。
今回は、 Mimetic Digitalis から
・INDEX(スライスしたサンプルの再生位置)
・SAMPLE(再生するサンプルの種類)
・FX MIX(内蔵エフェクターのDry/Wet)
へ CV をアサインします。
スタート画面から「CV」を選択し、CVインプットの設定画面に移動します。
上段3つのエンコーダを用いて、CV1を「SMP:INDEX」、CV2を「SMP:SAMPLE」、CV3を「FX:MIX」に設定しましょう。
trig2(Siht)ボタンを押すと CV in の範囲設定ができます。今回は全て「0 – +5V」を選択しましょう。
4.シーケンサーの設定
まずは、Mimetic Digitalis の Out1,2,3 をそれぞれ、Sample Drum の CV1,2,3 へパッチングします。
スライスの Index の再生順は、ある程度順番に鳴らしたほうが扱いやすいのため、Mimetic Digitalis の 1ch のシーケンスは手動で設定します。
Tipsとして、効率的な INDEX 設定方法をご紹介します。
まずは、他のモジュールから用意したクロック(もしくはパルス波のLFO信号等)を、Sample Drumの「Trig1」へパッチングしましょう。
この段階では、1種類のインデックスのみが Trig に合わせてなり続けています。
次に、Mimetic Digitalisの「1」ボタンを押してLEDを点灯させ、1chの編集を有効にします。
「Next」ボタンでステップを選択しながら、「Edit」ノブで出力CVの値を設定していきます。
動画① のように、Sample Drumを鳴らしながらエディットすると効率よく INDEX の設定が行なえます。
動画①:Mimetic Digitalis で Sample Drum の index を編集
エディットが終了したら、クロックをMimetic Digitalisの「N」へ、Mimetic Digitalisの「T」をSample Drumの「Trig1」へパッチングしましょう。
動画② のように、シンプルなブレイクビーツが流れ続けているはずです。
◎パフォーマンスしてみよう!
下準備はこれで終了です。
最後に、Mimetic Digitalisの2,3chを用いて、ブレイクビーツに装飾を施していきます。
Mimetic Digitalisの「1、2、3」ボタンを押して、1が消灯、2,3が点灯している状態にします。
シーケンサーを走らせながら、右下の「Shred」ボタンを好きなタイミングで押してみましょう。
「Shred」は、選択されているCh/ステップのCV出力の値をランダムに設定するボタンです。
動画③ のように複数のサンプルがランダムに出現しつつ、エフェクターのDry/Wetも過激に動き回るようになります。
動画③:Mimetic Digitalis の CV out 3つを用いて更にエディット
「Shred」で設定された値は16ステップ内で記録されループするため、シーケンサーを走らせながらモジュールを使うことで「Shred」を押し続ければランダムCVを出力し続け、離すと一瞬でループ化するようになります。
「zero」ボタンで選択されているCh/ステップのCV出力の値を0にできるので、音が暴れすぎたりした際は押してリセットしましょう。
また、Trig in や CV in にその他のCVソースを入力することで、ステップの進み方が大きく変化し、更に派手な崩しが可能になります。
一つ一つステップ選択し、「Edit」ノブで編集する使い方から、地道で大変なイメージのあるMimetic Digitalisですが、16ステップ×4トラックのCVシーケンスを一瞬でランダマイズし、即ループ化できるため、実はパフォーマンスに非常に適したモジュールなんです。
◎まとめ
いかがでしたでしょうか。
2モジュール+クロックのみでこれほど緻密かつ自由にサンプルのシーケンス&パフォーマンスができる組み合わせはなかなか有りません。
もちろん、Mimetic DigitalisやSample Drumを他のモジュールに置き換えて鳴らすことも可能ですので、お手持ちのモジュールで試していただけたらと思います。
ブレイクビーツ等のサンプル処理は、DAWのサンプラーインストゥルメント等でも簡単に行うことができますが、
モジュラーシンセを用いた制作には独特な魅力があります。
DAWや高性能なサンプラーに比べて機能的な制限がある一方、モジュレーションの幅が非常に広いため、思いもよらない音やフレーズに辿り着くことがあり、非常に刺激的な体験を得られることがあります。
ご興味がある方は、是非お試しいただけると幸いです。
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